三七人参について

薬草人参と食卓に並ぶ人参の違い

薬草としての「人参」は、ウコギ科の植物で、古来より東洋では薬草として使用されてきました。一方、みなさんがよく知っている野菜の「ニンジン」は、セリ科の植物の根菜です。日本では両者とも「にんじん」と呼ばれていますが、植物分類学上は別の種になります。
江戸時代にセリ科の根菜が日本に入ってくると、本来の人参同様に肥大化した根の部分を持つことから「せりにんじん」などと呼ばれるようになります。その後野菜として一般的になり、単に「ニンジン」と呼ばれることも多くなってきました。
これに伴って本来単に「人参」と呼ばれていたウコギ科の人参は、区別のために「高麗人参」や「薬草人参」などと呼ばれるようになりました。薬草人参は、広く薬用として使われており、ここ最近はその役割もより強くなってきています。ここでは薬草人参を「人参」と表記します。

中国に古来から伝わる人参

人参は、中国周辺を原産とするウコギ科の多年草植物です。その歴史は驚くほど古く、漢民族や朝鮮民族は紀元前から人参を食用としてだけでなく、生薬として利用してきました。
紀元一世紀頃の後漢の時代にまとめられたとされている「神農本草経」という古い漢方医学書にも「五臓を補う」という人参に関する記述を見つけることができます。古くから珍重されてきたものの、長らく栽培は困難とされてきました。その後栽培が行われるようになると、生薬として広く流通するようになり、中国や朝鮮半島だけでなく、日本でも栽培が行われるようになりました。栽培ものと比べると、自生する天然物は薬効が強いとされるため、野生の人参は今でも高値で取引されています。

人参には種類があるのをご存知ですか?

ウコギ科の人参には、いくつかの種類が存在し、それぞれ有効成分であるサポニンの含有量や効能が異なります。
ここでは広く知られている人参の種類をご説明します。

三七人参(ウコギ科トチバニンジン属サンシチニンジン)

田七人参とも呼ばれる、中国南部の雲南省や広西チワン族自治区の海抜1200m~1800m という限られた地域に生息する、紡錘状の根を持つ薬用植物です。人参属植物の中では最も原始的な種と推定され、原産地周辺に住む苗(ミャオ)族たちは古来から生薬として用いていたといわれています。有効成分サポニンの含有量が非常に高く、朝鮮人参の何倍も含まれているともいわれています。
16 世紀には薬学書「本草綱目」にその名が登場し、中国全土で知られるようになりました。

朝鮮人参
(ウコギ科トチバニンジン属オタネニンジン)

朝鮮人参は別名高麗人参、御種人参などと呼ばれています。また単に人参と呼ぶ場合は、この朝鮮人参を指す場合がほとんどです。中国遼東や朝鮮半島の原産で、現在中国東北部やロシアの沿海州まで広い地域で自生しています。古くから中国、朝鮮、日本で知られる薬用植物で、江戸時代には日本でも流通するようになりました。

竹節人参
(ウコギ科トチバニンジン属トチバニンジン)

日本原産の薬用植物で、オタネニンジンと異なり、根茎に1 年に一節ずつ増える竹節状の結節があるのが大きな特徴となっています。オタネニンジンでは根を薬用部位として使用するのに対し、竹節人参は根茎を使用します。有効成分サポニンのほか、特有のチクセツサポニンも含まれています。

西洋人参
(ウコギ科トチバニンジン属アメリカニンジン)

北アメリカ東部が原産で、アメリカの先住民にも古くから薬草として使用されてきた薬用植物です。18 世紀初頭にカナダ人によって発見され、その後中国人商人によって中国にもたらされたといわれています。広州や香港から世界中に輸出されるようになったことから、別名広州人参とも呼ばれています。

「金不換」と呼ばれる人参の王、
三七人参が人気の秘密とは?

栽培年数に3~7 年を要することから別名田七人参とも呼ばれる三七人参は、氷河期より前の2500 万年前には存在していた古い種で、古くから高貴薬として知られ、お金に換え難いほどの価値が高いことから、金不換とも呼ばれます。比較的低緯度地域の厳寒や酷暑のない気候を持った高海抜地域でのみ生育可能で、雲南省や広西チワン族自治区周辺の限られた地域で栽培されています。生育までの手間がかかり、量産に向いていないことから、特に貴重な生薬として知られ、漢方薬として知られている「雲南白薬」「片仔廣」などにはこの田七人参が主成分として配合されています。最近の研究の結果、朝鮮人参やアメリカ人参などと比べて有効成分であるサポニンの含有量が多く、「人参の王」とも表現されています。実は朝鮮人参などに比べると中国外での認知度は決して高いものではありませんでしたが、ベトナム戦争時に、消炎効果や止血作用のある薬草として三七人参が北ベトナム軍に送られ、戦場で大きな効果を上げたことから、世界にその効果が広く知られるようになりました。その後中国政府はこの貴重な田七人参の流出を防ぐべく、国外輸出を禁じていた時代もありました。三七人参は、文字通りお金に換えることができないほどの価値を持っているのです。

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